正当防衛と緊急避難の異同について

〇正当防衛について

 犯罪とは、構成要件に該当する違法で有責性のある行為である。正当防衛については、他者からの侵害行為を避けるための相当な範囲での反撃行為については、違法性が阻却されるという考え方である。つまり、正当防衛は、明白な現在の危険がある場合である場合に限るとされ、また、反撃行為の態様においても、「不正」対「正」という関係において、社会通念上、相当性が認められる範囲において違法性が阻却されると解する。なお、仮に相当性が認められない場合は過剰防衛として処断される場合がある。

〇緊急避難について

 緊急避難については、現在の差し迫った危険を避けるための行為である場合は、他人の法益を侵害することがあっても、避難行為によって生じた被害が、避けようとした被害を上回らなった場合に限り、違法性が阻却されるという法理である。この場合、正当防衛とは異なり、自分に対する侵害行為が天災等による場合であり、自分の法益を守るために、他者の法益を侵害することになるため、いわゆる補充性の原則、つまり、他に取るべき方法がなかったことが必要である。

 なお、正当防衛と緊急避難のいずれについても、「現在の差し迫った危険」、「明白な危険」といった概念は、いずれも同じ状態を意味すると解される。